ユーダリル
二人はメイドが持ってきたハーブティーを飲み干し菓子を食べると、部屋から出て行った。
しかし、肝心なことを忘れていた。オークションで競り落とした物を一番上の兄に、渡さないといけないのだ。これを行なわなかったら、後で何を言われるか。ゲーリーはペシペシと頭を叩くと、ウィルに先に行ってギルドで待っていてほしいと頼む。勿論、ウィルは了承した。
「ギルドで、待っているよ」
「買い物も宜しく」
「わかった」
軽い口調で返事を返すと、ウィルは堂々と玄関から出て行こうとする。だが、寸前でゲーリーに止められた。勝手口から入ってきたのだから、勝手口から出て行ってほしい。それが、彼の考え方だった。
流石にそのように言われたら、従うしかない。ウィルは足を勝手口に向けると、其処から外に出て行った。
と同時に、溜息をつく。
これから、最大級の仕事が待っている。まず先に、ギルドマスターの承諾を得ないといけない。
今回、悪いことで使用するわけではないので、ギルドマスターの雷が落ちる心配はないが、日頃の彼女の性格を知っているので、用心に越したことはない。それに、油断すると危ない。
だが、ゲーリーとの約束がある。ウィルは自分自身に気合を入れると、ギルドへ駆け足で急いだ。
「宜しいですか?」
ギルドに到着すると、真っ先にギルドマスターエリアのもとへ行く。そして先程の経緯と、趣味に付いて丁寧に話していく。その瞬間、エリアの口許が緩み味見したいと言ってくる。
これは、予想済みの反応。ウィルは何度も頷くと、最初からそのつもりで話し合っていたからだ。
「あら、そうなの?」
「マスターが、そのように言うと思いまして」
「当たり前じゃないの」
「味に、自信はないですが……」
「いいわよ」
「有難うございます」