ユーダリル
(仕方ない)
頭の中で、素早く値段を計算していく。後で、ゲーリーに六割分貰えば何とか生活費に響かない。
何も、全部負担することはない。それに気付いたウィルは、カウンターの上に金を置いていく。つりを貰うと面倒なので、つりを出さないように支払う。そして両手に買った物が詰まった袋を持つと、出入り口に行く。すると、持ち難そうにしているウィルの為に、店主が扉を開いてくれた。
「有難うございます」
「いえ。またのお越しを……」
そう言い、店主は扉を閉めた。
ウィルは扉が閉まるのを見届けると、荷物を持ち直しギルドへ急いだ。そろそろ、ゲーリーがギルドに到着しているかもしれない。それを思うと、いつの間にか歩く速度が速まっていた。
「行ってきました」
エリアの顔を見ると同時に、買い物してきたことを報告する。するとその時、横からゲーリーの声音が響いた。
「どうだった?」
「必要な物は、買ってきたよ。それより、お前の方は大丈夫だったのか? 其方の方が、心配だ」
「渡してきたよ。兄も、喜んでいた。といって、駄賃をくれないのが、哀しかったりするよ」
「でも、恩を売っておくといいよ」
流石、アルンに苦労しているウィル。どす黒い感情が湧き出し、上手い兄との付き合い方を教えていく。
勿論、これは褒められたものではないが、ゲーリーも苦労している身分。それが少しでも緩まればいいという、ウィルなりの優しさだった。その気持ちはゲーリーに伝わったのか、怪しく口許が緩んでいく。
「参考にするよ」
「良かった」
「何、悪巧み?」
二人の会話を聞いていたエリアが、怪訝な表情を浮かべながら言葉を掛けてくる。すると同時に二人は、同じような身振りで否定していく。そして互いに目配せすると、ギルドの奥へ走って行った。
此処で捕まったら、何を言われるかわかったものではない。それを身を持って知っているので、二人の行動は素早かった。
後ろから、エリアの声が響く。