ユーダリル
「十分だね。これを好きな形にして、焼けば出来上がりだ。今回は無難に、丸型でいいかな」
「いいんじゃないか」
最初の菓子作りということで、高い難易度に挑戦することはしない。それに挑戦したところで、上手く作れる可能性が低いからだ。二人は生地を千切ると、両手で丸めていく。しかし、そのままでは中まで火が通らない。丸めた後生地を潰し、平べったい形にしていった。
「あっ! 後は任せた」
「どうした?」
「竈の用意をする」
「そうか! 頼む」
日頃、自分で料理を作っているので竈の扱いは慣れているが、相手が菓子の場合はわからない。この場合、ゲーリーに任せてしまった方がいいだろう。ウィルは黙々と、生地を丸めていった。
「終わった」
「生地をトレイに載せる」
「くっつける?」
「いや、間をあける」
「了解」
言われた通りに、トレイの上に生地を載せていく。そして一通り載せると竈に入れ、焼きはじめた。
十数分後――
クッキーが焼けた。
竈の中からトレイを出した瞬間、部屋の中に甘い香りが漂う。同時に、グーっと胃袋が鳴った。
「綺麗に焼けたな」
「見た目はいいね」
「問題は味だ」
「じゃあ、早速」
焼き立てで熱々のクッキーを手に取ると、端っこを齧ってみる。だが少しだけ齧ったので、ハッキリとした味はわからない。それなら一気に食べてしまえばいいが、丸々口の中に入れると火傷の恐れがある。
だが、ゲーリーは頑張った。彼は丸々クッキーを口の中に入れると、頑張って咀嚼し味を確かめる。
「美味い?」
「ちょっと甘いな」