ユーダリル

「砂糖の入れすぎか」

「だが、はじめてにしては上出来じゃないか。素人の失敗の定番は、黒焦げにしてしまうらしいし」

 それを聞いたウィルは何かを思い出したのか、ポンっと手を叩く。以前実家のメイドの一人が菓子作りに挑戦し、見事に失敗したのだ。もともとケーキを焼こうとしていたらしいが、火加減の調節を失敗し真っ黒焦げにしてしまったのだ。それを思えば、このクッキーは上出来だ。

「問題は、マスターか」

「文句を言われなければいいけど。ほら、マスターって味に煩いイメージを持っているから」

「素人が作ったクッキーだし、それほど辛口評価には……いや、あのマスターの性格だと……ゲーリーの考えは、あっているかも」

「腹を括る」

「そうだね」

 二人は同時に長い溜息を付くと、クッキーを丁寧に皿の上に綺麗に載せていく。そして互いに気合を入れ合うと、真剣な面持ちでギルドマスターエリアが仕事に使用している部屋に行った。




「あら、早いわね」

「お約束の物です」

「頂くわ」

 エリアはクッキーを摘むと、口に運ぶ。味に不安があったのか、クッキーの端を齧る。そして何度か咀嚼を繰り返し、味わっていく。すると味が気に入ったのか、食べかけのクッキーを口の中に放り込んだ。

「どうですか?」

「美味しいわ」

「本当ですか!?」

「どうして、嘘を言わないといけないの」

 確かに、エリアが言っていることは正しい。しかし、すぐに信用できるものでもなかった。

 それは、日頃のエリアの性格が関係していた。ウィルとゲーリーは互いの顔を見合すと、コソコソと話し合う。すると彼女の言葉が信頼できると結論が出たのか、満面の笑みを浮かべた。

「何、その笑顔は」

「嬉しいのです」
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