ユーダリル
「そうです」
「これくらいで、大袈裟ね」
「大袈裟じゃないです」
ゲーリーの言葉に、ウィルは何度も頷く。今回初挑戦したクッキーが失敗したら、何を言われるかわかったものではないからだ。エリアは根に持つタイプで、後でグチグチと言われる。
それを二人は恐れていたので、エリアの反応は嬉しかった。その為、必要以上にはしゃいでしまう。
「まあ、いいわ。美味しいクッキーを食べさせてくれたもの。でも、仕事の件は忘れないでね」
「は、はい」
「今度、ウィルと一緒に仕事に行きます」
「えっ!? そうなの?」
間髪いれずに突っ込みを入れるウィルに対し、ゲーリーは小声で現在の状況を乗り切るには最適の方法を説明する。彼の説明に瞬時に納得したウィルは、何度も頷き「そうです」と、言う。
「そうなの。で、何処に行くのかしら」
「ユーダリルの他です」
「仕事熱心ね」
「別の場所の方が、仕事になると思いまして」
ユーダリルは数多くのトレジャーハンターが集まってくるので、別の場所の方が儲かる可能性が高い。それに少しでも危険を冒した方が、迫力があって楽しいというのがゲーリーの考えだった。
「無理はしないでね」
「……あれ? 優しい」
「……うん」
いつものエリアであったら、愚痴を言われるもの。しかし美味しいクッキーを食べて機嫌がいいのか、二人に優しい言葉を掛ける。だが普段のエリアの性格が性格なもので、素直に受け取ることができない。
動揺している二人の姿に、エリアの眉が動く。そしてそれに続くように、低音の声音が響いた。
「何、その顔は?」
「い、いえ」
「何でもないです」
「それならいいけど。遠出するのなら、前日に行く場所と日程を書いて提出してね。何かあった時、便利だから」