ユーダリル
「危ないぞ!」
「大丈夫です。アルン様と違い、私はディオンに信頼されていますので。それに、ウィル様も大丈夫と言っていました」
「そ、そうか」
セシリアの説明に、アルンは項垂れてしまう。内心彼は、ディオンに好かれていると思っていたが、現実は残酷。ディオンは敵対心剥き出してアルンに襲い掛かり、今も興奮が続いていた。
そんなディオンの顔を、優しく撫でるセシリア。すると、彼女の無事を確認し安心したのか、急に大人しくなる。
「な、何でだ」
「アルン様が、怖いのですよ」
「俺は、苛めてはいない。しかし、壊れた硝子を何とかしないといけないな。後、メイドに掃除をしてもらわないと」
「では、私が頼みに行きます」
「いや、待て」
セシリアが出て行ってしまうと、再びディオンに襲われる確立が高い。その為、アルンは自分がメイドに頼みに行くと言う。必死の形相で訴えかけてくるアルンに、セシリアは噴出していた。
実に可愛らしい態度。
流石にこのように言われると自分で呼びには行けず、セシリアはアルンにメイドを呼びに行くのを頼んでいた。
「わ、わかった」
「宜しくお願いします」
「う、うん」
何処か歯切れの悪い返事を残し、アルンは部屋から出て行く。そして扉が閉まると同時に、セシリアは再び噴出していた。
だが、途中で笑いが止まる。
それは、先程の出来事を思い出したからだ。
溜息がもれる。
その時、ディオンの切ない鳴き声が響いた。
「大丈夫よ」
心配を掛けてはいけないと、セシリアは笑顔を作る。だが、何処かぎこちないもの。しかしセシリアが笑顔を作ってくれたことがよほど嬉しかったのか、ディオンは顔を左右に揺らし喜ぶ。
可愛らしい反応にセシリアは今度、鼻先を指で撫でる。その時、聞き覚えのある声音が彼女の耳に届く。