ユーダリル
「おお! 兄貴、頑張る」
「ですが、途中でディオンに邪魔されました」
「なるほど! 何となく、理由がわかった」
先程のディオン襲撃事件の裏側に隠された真実。それは、アルンがセシリアにプロポーズしようとしていたのだ。しかしそれを目撃していたディオンは、アルンがセシリアを苛めていると勘違いし、彼女を助けなければいけないという使命感のもとで、動いたのだった。
真相を知った瞬間、ウィルはケラケラと笑い出す。しかし同時に、やっとアルンが決意してくれたことを喜ぶ。
「勿論、結婚するんでしょ?」
「え、ええ」
「良かった。以前、ユフィールとアールグリードにドレスを買いに行って、それを着られる時がきたよ」
「あ、あの時の……」
「以前も似た話が出て、その時に早とちりして買いに行ってしまったんだ。あの後、残念がっていたよ」
それを聞いたセシリアは、苦笑するしかなかった。まさか、自分の妹がそのようなことをしていたとは。
嬉しいような。
恥ずかしいような。
何とも、表現し難い感情があった。
「あっ! でも、邪魔されたんだよね」
「最後まで、言われていません」
「じゃあ、またプロポーズされるかもしれないから……ディオンが邪魔に入らないように、見張らないと」
再びディオンが邪魔に入りプロポーズが破綻してしまうと、アルン以上にセシリアに申し訳ない。といって、いつプロポーズするかわからない。予想としては、今日の可能性が高い。なら、ディオンをつれ何処かに行っているのが一番だろう。だが、下手に隠し事をするとバレてしまう。
なら、仕事をしに行くのが一番だ。
そうと決まれば、行動は早い方がいい。ウィルは立ち上がると、服に付いた草と土を叩いていく。
そして横で寝ていたディオンの身体をゆさゆさと揺らし、起きるように促す。しかし深く眠っている為か、起きる気配は全くない。普段であったら寝ているディオンを置いていっても構わないのだが、今回はディオンがいないと話にならないので、必死に起こしていく。