ユーダリル

 といって、どの部屋を利用しているかわからない。だが、何となく場所は予想が付けられた。

 アルンは、高く見渡しがいい場所にいる。

 それが、ウィルの考えだ。

 その考えに、ユフィールは反応に困ってしまう。だが、人間出世すると、どうして高い場所に部屋を置きたがるのか。庶民を見下したいのか、それとも高い地位に就いた優越感に浸りたいのか。はたまた、もっと真面目な考えがあるからか。アルンの場合、悪い意味合いが強い。

 続けられた説明に、ユフィールはますます困ってしまう。それだけ、ウィルの言葉がピッタリと当て嵌まっていたからだ。

「というわけだから、片っ端から捜そう」

「わかりました」

 彼の言葉に頷くと、二人は並んでアルンとセシリアを捜しに行った。最初に向かう場所は、建物の二階。ウィルの説明が正しければ、アルンは二階の何処かの部屋で仕事を行なっているはずだ。

 まず、階段近くの扉を開く。

 しかし、其処には誰もいなかった。

 その部屋は、お客様用の部屋だ。普段は使用していない部屋なのだが、メイド達が定期的に掃除を行なっているので、とても綺麗であった。流石、ラヴィーダ家のメイドは優秀である。

「違った」

「悔しそうですね」

「できれば、一回で見付かればよかった。と、嘆いている暇はないか。さて、次を捜そうか」

「はい」

 二番目に向かった場所は、同じようにお客様専用の部屋。一見、誰も使用していないように思えたが、テーブルの上に書類が挟まったファイルが置かれていた。それが目に入った瞬間、ウィルは悟る。

 この部屋で、違いないないと――

「発見」

「そうなのですか?」

「ほら、あれ」

 指差した方向にあったのは、この部屋を使用していると確信した証拠、一冊のファイルだ。それを目にしたユフィールは、納得したしたように頷く。その時、聞き覚えのある男性の声が響く。反射的に二人は振り返ると、視線の先に立っていたのはアルンとセシリアだった。
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