ユーダリル
「あ、兄貴」
「何をしている」
「兄貴とセシリアさんを捜していたんだ」
「何故?」
「結婚式参列者の一覧表を作りたいんだ。で、兄貴とセシリアさんに呼ぶ人を聞こうと思って」
「そうでしたか」
今度はアルンに代わって、セシリアが発言する。この場合、アルンと話すよりセシリアの方がいい。ウィルはそう思ったのか、彼女に頼んで今のところ呼ぶべき人物の名前を聞き出す。
「無視するな」
「無視していないよ。兄貴とセシリアさん。どちらがいいと考えたら、セシリアさんがいいと思ったんだよ」
自分も自覚しているのか、的を射た言葉にアルンは反論できなかった。ただピクピクと顔を引き攣らせ、一言「勝手にしろ」と、言い残す。捨て台詞に近いその言葉に、セシリアはクスっと笑ってしまう。
普段のアルンであったら、セシリアに反論している。だが「結婚」が絡んでいる為か、今日は静かだ。
その為、スムーズに名前を聞き出すことができる。ユフィールがセシリアにペンと紙を手渡すと、彼女は重役達や世話になっている人物の名前を書き出す。刹那、アルンの悲鳴が響いた。
「その人物もか」
「いけませんか?」
「いやー、ちょっと」
「日頃、お世話になっているじゃないですか。ですから、呼ばないといけません。今後の関係に響きます」
アルンの本音としては、この名前の人物を呼びたくはない。しかしセシリアが言うように、相手は仕事上の付き合いで重要な位置にいる人物。一時期の感情で、関係を悪くするのは得策ではない。
セシリアの指摘に、渋々ながら頷く。なんだかんだで、相手と関係を切ることができない。
「では、そのままで」
アルンの了承を得られれば、此方のものである。セシリアは例の人の名前を入れつつ、違う人の名前を書いていく。そして一通りの名前を書き出すと、ウィルに手渡す。それを貰ったウィルは「有難う」と一言言い残すと、ユフィールを連れメイドの休憩室へ戻って行った。