ユーダリル
「人数、多いね」
「アルン様の人望ですね」
「兄貴の人望……なのかな」
どちらかといえば、アルンは敵の方が多い。といって、仕事ができない人物ではない。あのように見えて、優秀な部分がある。だからこそ、彼等の結婚式への参列者が多い。だが、全員が来るとは限らない。
これは、予定としている人物。しかし、会社の重役達は参列してくれるだろう。勿論、セシリアの為だ。
「ライバル関係はいるのかな」
「どうでしょうか」
「セシリアさんは優しいから、相手がライバルであっても呼ぶに違いない。兄貴と違ってね」
彼女は仕事ができ、尚且つ社員に優しい。また時に悩み相談も行なう、素晴らしい女性だ。
これもセシリアの日頃の頑張りが深く関係しており、今回の結婚式はセシリアを中心に動く。
「では、頑張りませんと」
「そうだね。あと、会社の人達も喜んでもらう。兄貴の為に、苦労しているから。そう、愚痴を聞いているから」
「そうなんですか」
時折、実家にやって来る重役達。彼等の会話を聞き、知っていた。彼等は直接、アルンに愚痴ることはしない。また、セシリアは秘書としてアルンの面倒を見ているので、あまり愚痴るのは悪い。
なら、言い易いウィルがいいだろう。多くの重役達が同じ意見を持っていたのか、ウィルに愚痴る。一方のウィルも、愚痴を聞くのは嫌いではない。ただ、アルンの愚痴は別であるが。
「皆様、ご苦労をなさっているのですね。会社の経営というのは、改めて難しいと思いました」
「社長が社長だからだよ」
やれやれと肩を竦め自身の兄の悪い部分を嘆くが、嘆いている場合でもない。ウィルにはウィルの仕事があるからだ。
「で、招待状だよね」
その言葉に、ユフィールは頷く。しかし招待状なので、普通の手紙というわけにはいかない。招待状には招待状の封筒と紙が存在し、それを購入しに行かないといけない。その説明に、ウィルは間の抜けた表情を作る。どうやら、普通の封筒と紙を使って送るつもりだったようだ。