ユーダリル

「人数、多いね」

「アルン様の人望ですね」

「兄貴の人望……なのかな」

 どちらかといえば、アルンは敵の方が多い。といって、仕事ができない人物ではない。あのように見えて、優秀な部分がある。だからこそ、彼等の結婚式への参列者が多い。だが、全員が来るとは限らない。

 これは、予定としている人物。しかし、会社の重役達は参列してくれるだろう。勿論、セシリアの為だ。

「ライバル関係はいるのかな」

「どうでしょうか」

「セシリアさんは優しいから、相手がライバルであっても呼ぶに違いない。兄貴と違ってね」

 彼女は仕事ができ、尚且つ社員に優しい。また時に悩み相談も行なう、素晴らしい女性だ。

 これもセシリアの日頃の頑張りが深く関係しており、今回の結婚式はセシリアを中心に動く。

「では、頑張りませんと」

「そうだね。あと、会社の人達も喜んでもらう。兄貴の為に、苦労しているから。そう、愚痴を聞いているから」

「そうなんですか」

 時折、実家にやって来る重役達。彼等の会話を聞き、知っていた。彼等は直接、アルンに愚痴ることはしない。また、セシリアは秘書としてアルンの面倒を見ているので、あまり愚痴るのは悪い。

 なら、言い易いウィルがいいだろう。多くの重役達が同じ意見を持っていたのか、ウィルに愚痴る。一方のウィルも、愚痴を聞くのは嫌いではない。ただ、アルンの愚痴は別であるが。

「皆様、ご苦労をなさっているのですね。会社の経営というのは、改めて難しいと思いました」

「社長が社長だからだよ」

 やれやれと肩を竦め自身の兄の悪い部分を嘆くが、嘆いている場合でもない。ウィルにはウィルの仕事があるからだ。

「で、招待状だよね」

 その言葉に、ユフィールは頷く。しかし招待状なので、普通の手紙というわけにはいかない。招待状には招待状の封筒と紙が存在し、それを購入しに行かないといけない。その説明に、ウィルは間の抜けた表情を作る。どうやら、普通の封筒と紙を使って送るつもりだったようだ。
< 292 / 359 >

この作品をシェア

pagetop