ユーダリル
彼は仕事関係ではシッカリとし、宝探しの知識は一流だ。しかしこういう面はメイド達に任せている為か、少々疎い部分がある。といって、ユフィールがその点を指摘することはしない。
知らないのなら、仕方がない。
そう考えているのだろう、彼女はウィルが理解できるように、丁寧に説明していくのだった。
「なるほど」
「ですので、買いに行きましょう」
「売っているんだ」
「はい」
この反応に対し、相手がユフィールではなくアルンだったら、鋭い突っ込みと嫌味たっぷりの愚痴が返ってくるだろう。だが、ユフィールの場合、相手を傷付ける言葉は一切言わない。向けられる微笑に自分の無知っぷりを実感したのか、ウィルは恥ずかしそうに笑う。
「行こうか。あっ! 場所……」
「案内します」
「有難う」
その後ウィルは、ユフィールの案内でユーダリルの中心都市へ行き、封筒と紙を購入していく。
一方、ユフィール以外のメイド達は、メイド長の指示の下結婚式の準備と計画を練っていった。
その間、アルンとセシリアは仕事に集中する。
本来であったら、二人が中心となって動かないといけないのだが、仕事が山のように溜まっている。
また、セシリア曰く「アルンが参加すると、逆に混乱する」という。何せ、文句が多い人物だから。
その為、二人は仕事に力を入れる。
いや、他にも理由は存在した。会社経営は、毎日が勝負。油断し手を抜いた瞬間、他の会社に足下を掬われてしまう。だからこそ、セシリアに葉っぱを掛けられつつ仕事を行なう。
計画では、結婚式は七ヶ月後。
時間としては結構あると思われるが、ごたごたしている中で準備を行なっているので、予想以上に時間の経過が早い。しかし素敵な結婚式にしたいということで、メイド達は頑張る。
勿論、アルンの為というわけではなく、比重に関してはセシリアの方に傾いていた。招待状を送った者達からの返事も、次々と返ってきている。誰もがアルンの結婚式を驚いているのか、全員が参加するという。