ユーダリル

 この意外な結果に、驚いているのは式の主役の二人。予想では何人かが辞退すると思っていたらしく、全員が参加してくれることに素直に喜ぶ。しかし、二人は気付いていない。参加者は、アルンの正装を見てみたいと思っているからだ。だからこそ、全員が参加するのだった。

 普段のセシリアであったら、見抜いているだろう。だが幸せの方が勝り、今回はいつもの鋭い勘が鈍る。

 一日一日と、式の日が近付いてくる。

 最初は「関係ない」という雰囲気を出していたが、やはり式を挙げられることが嬉しいのだろう表情が緩んでいく。

 それを遠巻きに眺めているのは、ウィルとユフィール。そして、庭で横になっているディオン。

「平和だ」

「どういう意味ですか?」

「最近、兄貴が怒っていない」

 ウィルが言うように、ここ数週間アルンは怒っていない。それどころか、妙に機嫌がいい。また仕事にも精を出し、順調に業績を伸ばしているという。勿論、重役達もホッとしている。

 そして周囲の働きとアルンが静かにしていたお陰で準備が順調に進んでいき、その日を迎えることができた。
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