ユーダリル
祝福の後のはじまり

 晴天に恵まれた今日、アルンとセシリアの結婚式だ。メイド達はいそいそと動き、料理人は二人の為に最高の料理を用意する。そして新郎新婦の側には、ウィルとユフィールがいた。

「兄貴、似合っているよ」

「嫌味か」

「違う」

 ウィルにしてみれば、これは正直に言った言葉である。だが、アルンの性格上、相手の言葉を斜め読みしてしまう。その為、弟の祝いの言葉を素直に受け取ることができないでいた。

 祝いの日でもこのやり取りを続ける兄弟に、セシリアは横でやれやれと肩を竦めてしまう。

「アルン様」

「何だ」

「このような日に、喧嘩をなさらなくても……」

 その言葉に同情するように、ユフィールが頷く。普段自己主張を滅多にしない彼女であるが、今日は女性にとっては特別の日ということもあり、積極的に自己主張をするのであった。

 しかしアルンの鋭い視線で、萎縮してしまう。そして姉の影に隠れ、怯えてしまう。可哀想な妹の姿に、セシリアはアルンにいつもの厳しい言葉をぶつけていく。勿論、容赦ない。

「妹を苛めないで下さい」

「前も、同じことを言われた」

「はい。言いました」

 式を控えているというのに、二人は相変わらず。いつもであったら生暖かく見守るウィルであったが、式の前にギスギスするのは気分的にいいものではない。ウィルは咳払いの後、突っ込みを入れた。

 流石に、今の突っ込みは効いた。アルンとセシリアは互いの顔を見合うと、苦笑してしまう。

「で、兄貴」

「何だ」

「セシリアさんに、何も言わないの?」

 その言葉にアルンは、ひらひらと手を振る。どうやらウィルが何を言いたいのか、すぐにわかったらしい。しかしそれは、ウィルとユフィールがいる目の前で言うのは恥ずかしい。その為、二人に出て行けと言わんばかりに手を振るが、ウィルとユフィールは動かない。
< 295 / 359 >

この作品をシェア

pagetop