ユーダリル
「おっ! 言った」
「良かったです」
「やっぱり、嬉しい?」
「嬉しいです」
姉が幸せになることは妹として嬉しいのだろう、ユフィールは胸元で両手を組み跳躍していた。
彼女の可愛らしい姿にウィルは、スリスリと頭を撫でる。完全に、子犬をあやしているようだった。
ユフィールはウィルに撫でられていることが嬉しいのか、頬を微かに赤らめる。そして大人しく、撫でられ続けていた。
扉を挟んで、二組のカップルがほのぼのとした時間を過ごす。しかし、ウィルとユフィールのほのぼの時間は、長く続くことはなかった。何と、アルンが気配を察知し扉を開いたのだ。
「お前等……」
「あ、兄貴」
「聞いていたのか?」
「勿論」
その軽い口調に、アルンの眉がピクっと動く。それでも今日はめでたい日なので、怒りを内に納める。
彼は、コホンっと態とらしい咳払いをする。すると、先程の仕返しとばかりにウィルをからかっていく。
「仲がいいな」
「何、いきなり」
「二人で、一緒にいる」
「だって、今日の式は兄貴とユフィールの姉さんだよ。一緒にいても、おかしくはないけど」
「そ、そうだな」
相手の痛い部分を突いたつもりだが、逆に言葉を返されてしまう。どうも今日は、いつもの毒攻撃に力が入らない。本調子ではないことに、アルンは早々に攻撃を止めてしまった。
本能的に「弟に負けてしまう」と察したのか「準備をしろ」と言い残し、扉を閉めてしまう。
普段のアルンとの違いに、ウィルとユフィールは互いの顔を見合う。そして同時に、首を傾げてしまう。流石にこれ以上の立ち聞きは、アルンだけではなくセシリアに迷惑を掛けてしまう。それに気付いたのか、ウィルは自分達も準備をしに行こうと提案するのであった。