ユーダリル
本当の意味での信頼がなければ、会社で仕事を行なわない。アルンは文句を言われていても、信頼はあるらしい。それを聞いたウィルは嬉しそうに微笑むと、ホッと胸を撫で下ろしていた。
その後、重役達との会話が弾む。勿論互いの年齢差は大きいが、アルンのネタで話が盛り上がっていく。
しかし、長々と会話を楽しんではいられない。何故なら、今回の主役の二人がやって来たのだ。
一般的に結婚式は教会で行なわれるものだが、アルンは式の現場を身内や知り合い以外に見られたくなかった。
その為、このように自宅の中庭で式を行い、態々神父に出向いて貰うという手段に出たのだった。
主役の登場に、参加者全員が一斉に拍手を送る。
それだけではない。周囲で働いているメイド達が、セシリアの純白のドレス姿に熱い視線を送っていた。
同じように、熱い視線を送っているのはユフィール。そのことに気付いたウィルは彼女の側に行くと、彼女に聞こえる声音で囁いた。
「セシリアさん、綺麗だね」
「うん」
「女の子の夢?」
「はい」
「そうなんだ」
彼女の言葉を聞いたウィルは、納得したように頷く。流石にこれを聞くと、いつか着させてあげたいと思う。しかし、それは今ではない。何せ、二人の結婚は年齢的に早いからだ。
だが、想像が膨らむ。
それが影響してか、二人の会話が盛り上がっていく。時折クスクスと笑い合い、仲がいいことを証明する。
「今日から、セシリアさんが義姉か」
「では、アルン様が義兄様ですね」
「兄貴に“様”は、いらないよ」
「そうでしょうか。アルン様は、このお屋敷で一番偉い方なので……姉が結婚したといっても……」
真面目過ぎるユフィールの言葉に、ウィルは苦笑してしまう。これが彼女のいい面であり、悪い面。どうやら今回は、悪い面の方が表面に出てしまった。普段であったら、横に流してもいい。しかしアルンとセシリアが結婚する今、それを横に流していい問題ではなかった。