ユーダリル
同性に抱き締められたことにより、ウィルの身体には蕁麻疹が浮き上がった。勿論、ウィルはそっち方面の人間ではないので、抱き締められたと同時に甲高い悲鳴を上げてしまう。
屋敷の中に響くウィルの悲鳴に、住人や使用人達は身体をピクっと震わせ何が発生したのかと動揺する。
状況を知らない使用人達が、一斉にウィルとゲーリーがいる場所へ集まってくる。しかし執事の短い説明によって、渋々ながら仕事場に戻って行った。それだけ、大事に発展してしまう。
「は、離せ」
「別に、いいじゃないか」
「嫌だ。それに、苦しい」
「わ、悪い」
呼吸困難を起こしつつあるウィルに驚いたゲーリーは、慌ててウィルを解放する。そして、何しにやって来たのか尋ねた。
しかし、ウィルはなかなか話そうとはしない。彼は空気を肺いっぱいに吸い込み、呼吸を整えていた。そして呼吸が整うと、ギルドマスターから受けた仕事に付いて簡単に話していく。
「また、それは……」
「で、一緒にやろう」
「金は?」
「半分ずつ」
「まあ、それなら……」
半分ずつ金が貰えるということで、ゲーリーの気持ちが揺らぐ。それに一緒に仕事を行なうのがウィルということで、安心感もあった。これも昔ガチンコ勝負を行なったのが、いい影響を与えていた。
「ゲーリー様、お仕事ですか」
「そんなところだね」
二人の会話を聞いていた執事が、横から口を挟んでくる。その言葉にゲーリーは頷き返すと、両親と兄にこのことを話しておいてほしいと頼んだ。普通、仕事に行くというのは自分で言うもの。そのことを突っ込むウィルであったが、ゲーリーは「面倒」と言い、執事に頼むのだった。
「うちの兄貴なら、怒るぞ」
資金提供者が実の兄ということで、仕事の内容を逐一報告しないといけない。一度「面倒」と言って言い忘れたことがあったが、それで大目玉を食らったことがある。そして、資金提供ストップまで行ったことがあり、それ以降は真面目に仕事の内容を報告しているのだった。