ユーダリル
ウィルの話にゲーリーはゲラゲラと笑い出すが、ウィルの睨みによって「冗談」と言い、誤魔化していく。普段の彼であったら愚痴のひとつも言っているが、今回は仕事を共に行なう人物。グッと怒りを内に収めた。
「で、本当にやってくれるのか?」
「勿論」
「助かるよ。今回の仕事は、一人じゃ不安なんだ。こういう仕事って、やったことがないから」
「それ、同じ」
「二人揃えば、何とかなるだろう」
「だね」
聞き方によっては「いい加減」と捉えられなくもないが、二人とも護衛の仕事を行なったことがないので仕方がない。
ゲーリーとの確約を取り付けたウィルは、次にギルドへ行くと言う。ギルドマスターは今回、ウィルが一人で仕事を行なうと思っているので、ゲーリーのことを伝えないと大事に発展してしまう。
「おっ! 優しい」
「此方が、頼んだからね」
「で、日にちは?」
「ああ、忘れていた。一週間後」
「了解」
軽い口調で返事を返すと、ゲーリーはイソイソと自分の部屋に戻って行く。予想以上にやる気のゲーリーに苦笑すると、ウィルは執事にメイド達に不信感を抱かせてしまったと謝る。
「ウィル様が、謝ることはないです」
「今度は、事前に連絡をするよ」
「わかりました。それと、ゲーリー様もウィル様がいらっしゃるのは楽しみにしておられます」
「そうなんだ。そう言われると、たまに遊びに来ないといけないな。仕事で、世話になったりするし。で、帰るよ」
その言葉に執事は深々と頭を垂れると、ウィルを門の前まで見送ると「また、お越し下さい」と言い残し、屋敷の中へ戻って行った。その後姿を暫く見送ると、ウィルはディオンのもとへ戻って行った。
間延びした声音でディオンの名前を呼ぶと、ガサっと草が揺れる音が響く。そして黒い物体が草を掻き分け、ウィルのもとへ近付いてくる。待つのが飽きてしまったのか、それとも寂しい思いをしていたのか、ディオンはウィルの顔を見た瞬間ブルブルと尻尾を振った。