ユーダリル
従順な相棒の姿にポンポンっと頭を叩くと、ウィルはディオンの背中に跨る。そして、ギルドへ急いだ。
ギルドに到着したウィルは、マスターエリアにゲーリーと一緒に今回の仕事を行なうと報告した。最初は難色を示していたエリアであったが、真面目に仕事を行なうということを前提に了承してくれた。
エリアに報告し了承を得ることができれば、此方のもの。これで仕事ができるとホッと胸を撫で下ろしたウィルは、ディオンを街外れに待たせディオン専用の食べ物を購入しに行った。
最近、長期保存が出来る雑穀系の食べ物しか食べさせていない。今日はちょっと高価な物を食べさせてやろうと、買い物にやって来たのだった。ウィルが探しているのは、干し果物。
しかし今後のことを考えると、それほど多い量を購入することはできない。彼が購入したのは、干し葡萄。
量は多くはないがディオンも満足してくれるだろうと、ほくほくとした気分で帰って行った。
嗅覚が鋭いディオンが、干し葡萄の香りに気付かないわけがない。だが、自宅に帰ればユフィールの美味しい食事が待っているので、今干し葡萄を与えるわけにはいかない。
彼の言葉にディオンはシュンっとなってしまうが、ユフィールの美味しい料理の味を知っているので我慢する。
食べ物に関しては、妙に物分りがいいディオン。だが、どのようなことであれ物分りが良い方がいい。ウィルは干し葡萄が入った袋を鞄の中に詰め込むと、ディオンの背に跨った。
自宅に戻ったディオンは、ユフィールが用意してくれた食事に飛び付いた。相当美味しい料理だったのか、食べ終わった後皿をペロペロと舐めている。しかし、これで食事が終わったわけではない。ディオンが本当に待っていたのは、ウィルが購入した干し葡萄だった。
「ウィル様は、優しいです」
「そうかな」
「このように、ディオンに食べ物を買ってくるのですから。ディオンも、喜んでいますので」
「食欲旺盛だから」
ウィルの言葉にユフィールは、クスクスっと笑ってしまう。ディオンの食欲の高さは、彼女は身を持って知っている。専用の食事を作っていると、窓から顔を覗かせているのだから。