ユーダリル

 更にダラダラと涎を垂らし、ブルブルと尻尾を振る。そして時に、壁を突き破りそうな勢いを見せるという。彼女の言葉に、ウィルは唖然となってしまう。前々からディオンは食欲旺盛だと認識していたが、まさかこれほどとは――

 気が優しいディオンだが、相手は飛竜。建物に体当たりされたら、たまったものではない。下手したら、建物が崩壊してしまう。彼女の言葉に真実を知ったウィルは、この点も躾た方がいいと気付く。

 ウィルは両手を組み首を傾げると、唸り声を出し脳味噌を動かす。だが、いい方法が思い付かない。

 唸り声を出すウィルに、ユフィールも首を傾げている。そして、何を考えているのか尋ねた。

「ディオンの躾」

「また、なさるのですか?」

「勿論」

「以前の日干しが……」

「日干しのような、厳しさはないよ。それに調理中にディオンが激突してきたら、ユフィールが危ない。それにディオンも怪我してしまうし、更に建物も倒壊してしまうからね。それを未然に防ぐんだ」

 その言葉に、ユフィールは納得したように頷く。確かに、時々身の危険を感じることがある。ディオンは頭がいい面も持っているが、万が一……というのも考えられるので、躾が必要だ。

「私は、協力できますか?」

「どうだろう。どのような方法にするか、考えていないんだ。以前のように、無理はさせられないし」

「では、私も考えておきます」

「有難う」

 ウィルとユフィールがそのような計画を練っていることを知らないディオンは、干し葡萄を食べ終え満足そうに地面に転がっている。時折大きく口を開け欠伸を繰り返し、のんびりとしていた。これも自分の身に起こる出来事を知らないからだろう、平和そのものの表情を作っていた。

「では、ウィル様もご飯を……」

「腹減ったよ」

「沢山作りました」

 「沢山」という言葉に反応するように、ウィルの腹が低い音を出す。その音にウィルは顔を赤らめ、ユフィールはクスクスと笑い出す。しかしユフィールにとっては、その音は嬉しかった。最近ディオンと同じように「美味しい」と言って、お代わりまでしてくれるのだから。
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