ユーダリル
「わかったわ。お通しして」
エリアの言葉に事務の仕事を行なっている人物は返事を返すと、部屋から出て行き例の依頼人を連れて来る。
「ようこそ、お越し下さいました」
普段、エリアはギルドメンバーに敬語を使用しない。しかし相手が依頼人や客人の場合は、全く違う。このように敬語を使い、態度を変化させる。その違いに、ウィルとゲーリーは渋い表情を作った。
だが、依頼人の前で渋い表情は失礼に当たる。二人は瞬時に笑顔に作り変えると、依頼人に挨拶した。
「彼等が、案内人です」
「宜しくお願いします」
エリアの説明に、二人は深々と頭を垂らす。その恭しい態度に、依頼人も頭を垂れていた。
依頼人の性別は男。正式な年齢はわからないが、見た目は三十代後半と若い。しかしキリっとした表情は知的で、眼鏡が良く似合っている優男だ。また長時間机に向かって勉強している影響か、肌が白く弱弱しい。
自分とは別世界で生きている依頼人に、ゲーリーはポツリと本音を漏らす。それは「大丈夫か」という心配だ。
「な、何とか」
ゲーリーの呟きが聞こえたのか、依頼人はポリポリと頬を掻きつつ笑い声を発する。どこか間延びした笑い方に、ゲーリーだけではなくウィルも心配になってくる。と同時に、不安感も湧き出てくる。
それに気付いたのか、エリアが咳払いを繰り返す。その咳払いにウィルとゲーリーの身体がピクっと反応を示し、このような考えを持ってはいけないことに気付く。そして、素直に謝った。
「いえ、気にしないで下さい」
依頼人の生活はのほほんっとしているらしく、これくらいのことで怒らないらしい。その証拠に、のんびりとした口調で自分の名前を名乗った。
彼の名前は、シュナイダー。考古学会の中で有名な人物の助手をしているらしく、今日はその人物の代わりで来たようだ。
「まあ、押し付けです」
「……そうですか」
シュナイダーの説明に、ウィルとゲーリーは何と言葉を返していいか迷う。押し付けられたといってもこのように来ているのだから、余程考古学が好きなのだろう、ここまでの情熱を見せ付けられると全力で協力しないといけない。ウィルとゲーリーは互いの顔を見合うと、自分達の名前を名乗っていった。