ユーダリル
「ウィルさんとゲーリーさんですか、宜しくお願いします。僕は戦えませんので、何かが起こった時は……」
「わかっています」
聞き方によっては「危険が起こった時は頼む」という風に捉えられなくもないが、実はシュナイダーの言葉には深い裏側が存在しているのだが、この時の二人は全く気付いていない。
勿論、エリアも同じだった。その為か、ニコニコと笑いながら三人の様子を椅子に腰掛けながら眺めていた。
「仕事は、今からですね」
「お願いします」
「場所は、何処でしょうか」
「えーっと、詳しくはわからないのですが、密集している島の端っこにあるといわれている、古い遺跡です」
シュナイダーの説明に、ウィルとゲーリーは同時に首を傾げる。ユーダリルは、思った以上に遺跡の数が多い。なので、このような説明では特定の場所を言い当てるのは難しかった。
これではわからないということをシュナイダーに伝えると、説明が書かれている手紙を二人に手渡す。それを受け取った二人は書かれている文字を読み、どこの遺跡なのか推理していく。
「あそこかな」
「多分、あそこだ」
「わかりましたか!」
二人が繰り返す「あそこ」という単語に、シュナイダーが目を輝かせ言葉を投げ掛けてくる。
場所がわからなければ、その遺跡を調査することができない。そして調査せずに帰ったら、何を言われるかわかったものではない。
だが、そもそもこの手紙を書いた者が悪い。きちんと遺跡の名前を記入しておけば、このようなことにならなかったからだ。その指摘にシュナイダーは、頭を掻きつつ苦笑いを浮かべる。
何でもその人物というのは、いい加減な部分を持っているという。だからこそ、今回の調査をシュナイダーに任せたのだ。
「……納得」
シュナイダーの説明に、ウィルとゲーリーは脱力感を覚える。また彼等の会話を聞いていたエリアは、顔を引き攣らせていた。彼女の性格上、このようないい加減な人物が嫌いだからだ。だが、その人物は今回の依頼人の上司。悪口を言っては今後に関わると思ったのか、沈黙を続けた。