ユーダリル

 ウィルは、それに参加することはしない。彼は後方で二人のやり取りを聞き、楽しむのだった。

 ゲーリーの予想外の説明の上手さに目的地に到着するまでの間、三人は飽きることはなかった。

 到着と同時に、今度はウィルが遺跡に付いて説明していく。この遺跡は、何人ものトレジャーハンターが出入りしているので、危険な場所ではない。だが、油断していると危ないという。

 だから仕事を行なう場合、必ずウィルかゲーリーに一言言ってから行なって欲しいと頼む。

「わかりました」

「では、中に入りましょう」

「俺達が、先に入ります」

「はい」

 ゲーリーの言葉にシュナイダーは元気いっぱいに返事を返すと、二人の後をトコトコと歩き続く。

 二人が案内した場所は以前ウィルが行った洞窟とは違い、一般的な遺跡と呼ばれる場所だった。所々に崩れた建物の破片が転がっており、高い文明が存在していたということを教えてくれる。

 シュナイダーは崩れた遺跡を見た瞬間、目が輝き好奇心が疼き出してくる。すると先程の約束を忘れてしまったのか、シュナイダーは近くに転がっている建物の破片に飛び付き調べはじめた。

「忘れている」

「まあ、仕方ないよ」

「常に、視界の中に入れておこうか」

「それがいいかもね」

 二人の話を聞いていないシュナイダーは、黙々と建物の破片を調べていく。すると何か面白い物を発見したのか、素早く服の右ポケットに手を突っ込むと古めかしいメモ帳を取り出す。それに続き左ポケットからインク壷とペンを取り出すと、メモ帳にペンを走らせていく。

「熱心だね」

「うん」

「暇だね」

 ゲーリーの言葉に、ウィルは何度も頷いて返す。しかしこの場所から動くことができないので、ウィルは地面から飛び出していた石の上に腰掛けると、シュナイダーが動くのを待つ。一方のゲーリーはその場で身体を動かし、暇な時間を潰していく。だが、途中で飽きてしまう。
< 338 / 359 >

この作品をシェア

pagetop