ユーダリル

 その為、ウィルにちょっかいを出す。しかし無駄な体力を使いたくないウィルは軽くあしらうが、ゲーリーは諦めないでちょっかいを出し続ける。最初はあしらい続けていたウィルだが、徐々にストレスが蓄積していく。

 だが、側に依頼人がいるので怒りを爆発させるわけにはいかない。ウィルは溜息を付くと、一緒に何か探してくればいいと提案する。するとその提案に興味を示したのか、ポンっと手を叩いた。

「行って来る」

「どうぞ。此処で待っている」

「何か見付けたら、有名になるかな」

「珍しい物を見付けたら、聞いてみれば」

「そうだね」

「まあ、頑張れ」

「おう」

 そう言い残すと、ゲーリーは遺跡の奥へ駆けていく。いそいそと走っていく姿に、ウィルは苦笑してしまう。自分より年齢が上だというのに、精神年齢はゲーリーの方が下。実に、可愛らしい。

 次にウィルは、シュナイダーに視線を向ける。何か面白い物を発見したのか、石の欠片を目の前に懸命にペンを動かす。

 ウィルはトレジャーハンターの仕事に集中しているように、シュナイダーは遺跡の調査に熱を入れている。

 勿論ウィルが遺跡調査に関しては専門外だが、このように集中して何かを行なうことに関しては評価できた。

 それにシュナイダーのような人物が懸命に研究を行なっているので、様々な歴史が明るみになってきている。現に歴史に付いての資料は、トレジャーハンターの仕事に役に立っている。

 後々、感謝の言葉を言わないといけない――

 そう思った時、ウィルの側に野生の生き物が寄って来た。寄って来た生き物は、黄色と茶色が混じったような毛を持つ、狐であった。クリクリとした青い瞳が、ウィルの顔を捉える。

 そして間延びした鳴き声と同時に首を傾げ、前足でポンポンっとウィルの足を叩いたのだった。

「何?」

 可愛らしい狐の姿に、ウィルは口許を緩め背中を撫でる。野生生物に触れスキンシップを取るのは難しいが、ウィルの目の前に姿を現した狐はウィルに触れられても嫌がらず、寧ろ触れられて気持ち良さそうにしていた。それに続き、その場でクルクルと回りはじめた。
< 339 / 359 >

この作品をシェア

pagetop