ユーダリル
溜まり溜まった感情は、ゲーリーの行動で爆発する。しかし愚痴っている途中で、大事なことに気付く。
愚痴っている時間は、勿体無い。この時間の間で、シュナイダーの身に危険が及んだら問題である。
愚痴を止め、真顔で考え込むウィル。すると結論が出たのか、ウィルはゲーリーの手を引っ張りだした。
「な、何」
「時間が、勿体無い。一緒に、捜しに行く。依頼人のシュナイダーが死んでしまったら、どうなる?」
「だ、だな」
ウィルの指摘に、ゲーリーは納得したように頷く。流石に、依頼人が死んでしまったら洒落にならない。下手したら「見殺し」と言われ、現在の仕事を廃業しないといけなくなってしまう。
それに、二人ともユーダリルにいられない。
二人が同時に脳裏に浮んだのは、身内の顔。ウィルは実兄のアルンで、ゲーリーは両親と兄だった。
そして、これまた同時に身震いする。これにより、二人は懸命にシュナイダーを捜すのだった。
「何処だ」
「この場所は、そんなに広くないし」
「だよな」
「しかしあの依頼人って、一点集中型の性格っぽいから……何処へ行くのか、予想ができない」
「同意」
「お前も」
鋭い指摘に、ゲーリーの身体が硬直する。それに続き引き攣った笑いをはじめ、暫くすると溜息が出た。
どうやら自覚症状を持っているのだろう、今度はウィルに詰め寄り反論することはなかった。
「でも、そういうところが好きだよ」
「本当!」
「何故、嘘を言わないといけない」
言った言葉が恥ずかしかったのか、ウィルの頬が微かに赤く染まっている。ゲーリーはとんでもない一面を持っているが、彼にとってはいい友人と思っている。だからこそ、一緒に仕事を行ないたい相手としてゲーリーを選んだ。一方ゲーリーは、相当嬉しかったのかガッツポーズを作っている。