ユーダリル

 しかし、長々とじゃれ合っている場合ではない。彼等の目的は、依頼人のシュナイダーを捜すこと。

 効率を考えると二手に分かれて捜すのが一番だが、ゲーリーを一人にしておくと何を仕出かすかわかったものではない。それなら効率が悪くても、二人で一緒に捜す方をウィルは選ぶ。

 小走りで、島の中を行ったり来たり。すると、見慣れた後姿が二人の視界の中に飛び込んできた。

「あっ!」

「いた」

「って、凄く近くに」

「灯台下暗しだね」

 シュナイダーがいた場所は、二人がじゃれ合っていた場所のすぐ近くだった。彼等は遠くに行っていると勝手に思い込み、遠くから捜していたのだ。だが、シュナイダーが見付かったことにホッとする。

 二人は互いの顔を見合うと、シュナイダーのもとへ歩いて行く。そして同時に咳払いすると、彼の名前を呼んだ。

「あれ? どうしました」

「捜しました」

「捜す?」

「急に何処かへ行ってしまいましたので。何処かへ行くのでしたら一言言って欲しいと、お願いしました」

 二人の言葉に約束事を思い出したのか、シュナイダーの表情が変化する。どうやら、完全に約束事を忘れていたらしい。シュナイダーの反応にウィルは溜息を付き、ゲーリーは肩を竦めた。

「では、常に一緒にいます」

「俺も?」

「当たり前だ」

 ウィルの予想外の言葉に、ゲーリーは驚きの声音で言葉を返す。それに対しウィルは冷静に言葉を返すと、笑顔で「いいよね?」と、尋ねる。勿論、現在の状況を考えると断るのは不可能だ。

「わ、わかった」

「宜しい」

 半分はウィルの迫力に負け、残り半分は「真面目に仕事を遂行」という気持ちが働いたので、彼の言葉を受け入れた。それにシュナイダーが勝手に何処かに行ってしまい危険な目に遭ったら、取り返しの付かないことになってしまうので、ウィルと一緒にシュナイダーのもとにいることにした。
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