ユーダリル
「有難う」
「いいよ。で、今後は気を付けよう」
「……だな」
再度、身を持って知った野生生物の強さ。噛んだ生き物が毒を有していたら、ゲーリーは亡くなっていた。だが幸い、狐が毒を持っていることはないので、薬を塗ればすぐに治る。
薬を塗り終わった後、捲くっていた袖を下ろす。そして「やれやれ」という形で溜息を付くと、シュナイダーの方向に視線を向け、三人で仲良く遺跡の調査をしないか提案をする。
「別に、いいですけど」
「是非、お願いします」
鋭い言葉を放ったのは、ウィルだった。シュナイダーは何処かへ勝手に行ってしまい、このようなトラブルを招いた。なら三人で一緒に固まって調査をした方が、安全性が高いと判断する。
といって、ウィルが全ての面で協力するわけではない。彼の役割は、シュナイダーとゲーリーの監視。言葉で約束しても何を仕出かすかわかったものではないので、監視を怠るわけにはいかないのだ。
案の定、ウィルの考えは正しかった。二人は意気揚々とした感じで、遺跡の中から目新しい物を探していく。
そんな彼等の姿に苦笑すると、無事にギルドに戻れることを願うウィルがいるのであった。
◇◆◇◆◇◆
「只今、戻りました」
「ご苦労様」
ギルドに戻った三人は、真っ先にマスターエリアに報告する。無事に仕事をやり遂げたことを満足しているのか、妙に機嫌がいいエリア。その態度に喜ぶゲーリーだが、一方のウィルがげっそりとしている。
「何があったの?」
「いえ、特には……」
「それならいいけど」
流石に、先程の出来事の話を言うわけにはいかない。言った瞬間のエリアの反応を何となく予想でき、彼女の機嫌が悪くなるということは目に見えている。だからウィルは、作り笑いを浮かべ今回の仕事に付いて嘘を交えつつ報告していくのだったが、ゲーリーが横から口を挟んだ。