ユーダリル
幸せな日々
天気のいい昼下がり、アルンは珍しく早く仕事を終え一人で紅茶を飲み寛いでいた。
しかし一人で寛いでいるのは寂しいので、ウィルを強制的に呼び出す。
この場合妻のセシリアを呼ぶのが普通だが、今日はウィルを呼び出す。
そして、現在の仕事状況を聞き出していく。
要は、聞き易いというのが主な理由。しかしウィルは、いい気分はしない。顔を引き攣らせながら、紅茶を飲んでいた。
だが、ウィルも負けてはいない。
紅茶を飲み干すとニヤニヤとした怪しい表情を作りつつ、新婚生活に付いて尋ねていく。
「何でもいいじゃないか」
「気になるんだ」
「普通だ」
「あっ! 怒られたんだ」
図星を突かれたのか、アルンは横に向いてしまう。
その態度にウィルは溜息を付くと、仲良くして欲しいと願う。
特に、義姉のセシリアの幸せを願うウィル。
だから、文句を言ってしまう。
「最近、口煩い」
「兄貴が悪いんだよ」
「何もしていない」
「でも、いつか兄貴も父親になるんだし……だから、義姉さんと仲良くしておかないといけないよ」
「それは、いつかわからない」
そう言うと、アルンは紅茶を口に含む。
子供は、天からの授かり物。
なので、いつセシリアが妊娠するかわからない。
しかし、今から心構えをしておくことは悪くないというのが、ウィルの意見だった。
といっても、ウィルが独自に考えた意見ではない。
これはメイド長ミランダが、ウィルに言ったことだ。
「本当に、周りは……」
「それだけ、心配しているんだよ」
「そ、そうか」
最近、周囲の者達のお陰で現在の地位が確立されているということを学習したらしく、文句を言うが以前より素直になっている。
それにアルンも、内心では早く子供が欲しいと思っている。
その証拠に、複数のメイドが子育ての本を隠れて読んでいるアルンの姿を目撃しているという。
そしてその本の隠し場所は、机の引き出しの中。
勿論、気付かれてはいけないということで鍵を掛けているようだ。