ユーダリル
アルンは、セシリアと結婚した。
それを見てメイド達は、ウィルとユフィールが結婚して欲しいと願う。
だからこそ影で協力し、二人が1分でも長く一緒にいられる状況を作り出す。
ラヴィーダ家のメイド達は最強と呼ばれている反面、仲間思いの優しい一面を持っている。
だからこそ戦う時も統率が取れ、メイドとしては最高の仕事をこなす。
まさに、理想のメイド達だ。
「じゃあ、此方もお願いがあるんだ」
「何でしょうか」
「兄貴を宜しく」
「何かあったのでしょうか」
ウィルが直々にセシリアのことを頼むということは、何かトラブルが発生したのかもしれない。
そう思ったメイド達は互いの顔を見合うと、ウィルの周囲を取り囲みどのようなことが発生したのか口々に尋ねていく。
「トラブルは、発生していないよ」
「では、何が……」
「兄貴は、皆に嫌われていることを気にしているみたいなんだ。だから、少しでも気を配って欲しくて」
意外な言葉に、メイド達は返事に困ってしまう。
確かに彼女達は、アルンを苦手としている。
だが、決して心の底から嫌っているわけではない。
ただ、とっつき難い部分を持っているのだ。
「なら……」
「ウィル様のお心遣いを大切にします」
「有難う」
あのように実兄を弄っていたウィルだが、本心ではアルンのことを心配している。
なので、このようにメイド達に頼んだ。
やはり実兄とメイド達が仲良くやって欲しいと思うのが、彼の本音だ。
彼女達が了承してくれたことに、ホッと胸を撫で下ろす。
独身時はメイド達と仲が悪くても何とかなるが、結婚後は何かと忙しくなるのでメイド達の手を借りる回数も増えるので仲良くやっていかないといけない。
若くして社長の地位に就いているので、アルンは変にプライドが高い。
それが災いしていることに気付いていないので、ウィルが裏で手を回す。
これも兄弟愛がなせることであった。
ウィルの優しさに、メイド達の彼に対してのポイントが一気に上昇する。
その証拠にメイド達は満面の笑みを浮かべると、自分達が休憩の時に食べる菓子を差し出す。
そして一緒にお茶を飲まないかと誘うが、ウィルは丁重に断る。
この後、義姉のもとへ行く予定だからだ。