ユーダリル

 数分後、メイドに飲み物を頼んで来たウィルが帰って来る。

 すると気まずそうな表情を作るセシリアが、彼を出迎えた。

「義姉さん?」

「あったわ」

「別にいいです」

 彼が言うように、メイドに頼みに行くのは面倒ではない。

 それにウィルはメイドと仲がいいので、これくらいは何ともない。

 また彼女達もウィルの顔を見るのは嬉しいらしく、行くと喜ばれる。

 それを聞いたセシリアは、ホッと胸を撫で下ろす。

 何せ、無駄な行動を行なわせてしまったのだから。

「で、話」

「何かしら」

「兄貴のこと」

 その言葉に、セシリアの表情が強張った。

 新婚生活が上手くいっていないのか、ウィルは聞いてはいけないことを聞いてしまったと動揺を隠せないでいた。

 そして話を横に逸らそうとしたが、その前にセシリアが口を開き、現在の新婚生活に付いて詳しく語っていった。

「離婚!」

「それはないわ」

「……安心」

 アルンが嫌いになってしまい離婚に発展したら、悲しむ人が大勢出てしまう。

 何せ現在の会社が持っているのは、セシリアが裏で全ての面で支えているからだ。

 しかし、離婚の恐れはない。

 あのような性格の持ち主であっても、セシリアはアルンのことを愛し続けるという惚気発言が出た。

「義姉さん」

「どうしたの?」

「結婚っていいもの?」

「何かしらいきなり」

「兄貴と義姉の関係を見ていると、結婚っていいものかなーっと思って。まあ、まだ年齢が年齢だけど」

 照れを隠しながら聞くウィルの姿に、セシリアは可愛いという一面を感じたのかクスクスと笑い出す。

 確かにウィルが言うように、まだ結婚を考えるのは早い。

 しかしセシリアの妹といい雰囲気で付き合っているので、いつか二人は結婚するだろう。

 いや、セシリア自身いつかは結婚して欲しいと思っている。

 今、ウィルは結婚を意識しているので、ある意味でいい傾向だ。


< 353 / 359 >

この作品をシェア

pagetop