ユーダリル

「貴方は、幾つで結婚するの?」

「うーん、兄貴と同じくらい? 何と言うか、一般的な結婚年齢がいまいちわからないからね」

「多分、それくらいで大丈夫ね」

「なるほど」

 義姉の説明に、ウィルは納得したように頷く。

 彼女が言うのなら、間違いないだろう。

 彼女は経験豊富で、一般的な常識を心得ているからだ。

 ある意味、アルンより的確な答えをくれる。

 ユフィールといい関係を築いているウィルでも、恋愛面に関しては疎い。

 その為セシリアからの更なるアドバイスを貰いたいと思い口を開くが、それを遮るように扉が叩かれメイドが姿を現した。

「お、お邪魔でしたか?」

「いえ、大丈夫よ」

「茶を貰うよ」

 二人の言葉にメイドは頷き返すと、いそいそと二人の前に行きテーブルの上に黒い液体が注がれたカップを置いていく。

 その次に置いたのは、角砂糖が入った皿とミルクが注がれた陶器の入れ物。

 丁寧な仕事にセシリアは礼を言うと、メイドは恭しい態度で頭を垂らす。

 一方のウィルはメイドの顔を見詰めると、口許を緩め可愛らしい笑顔を作り、メイドの心を一瞬にして掴んだ。

 メイドは微かに頬を赤らめると、再び深々と頭を垂らすと恥ずかしさを隠すようにして部屋から出て行った。

「似ているわね」

「誰に?」

「貴方がよく知っている人」

「……兄貴?」

「当たり」

 アルンに似ていると指摘され、思わずムスっとした表情を作るウィル。

 彼はコーヒーの中に角砂糖を入れつつ、何処が似ているのか尋ねた。

 どうやら、この点はハッキリさせたいらしい。

「人を無意識に落とす所よ」

「兄貴ってそうなんだ」

 セシリアが語るアルンの意外な一面に、ウィルは普段のアルンの行動を脳裏に浮かべていく。

 しかし、義姉の説明とアルンの行動が一致しない。

 寧ろ、そのような一面を持っている自体信じられなかった。

 いやそれ以上に、その点が似ているということがちょっと納得できなかった。


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