ユーダリル
「それがいいわ」
「でも、好みがわからない」
「その時は、私が教えるわ」
「有難う」
プレゼントに関しては、セシリアがついているなら大丈夫だろう。
彼女は優秀な秘書であり、アルンの好みも心得ている。
セシリアが選んだプレゼントであったら、喜んで受け取ってくれるだろう。
再度セシリアに礼を言うと、ウィルは部屋から出て行きトレジャーハンターのギルドへ向かった。
◇◆◇◆◇◆
「今日の仕事は?」
「特にない」
ギルドに到着したウィルは何か依頼が入っていないか受付の人に尋ねたが、素っ気無い返事が返ってきた。
その返事に困ったような表情を作ったウィルは、日頃使用している道具の手入れを行なおうと思う。
最近仕事の関係で、道具の手入れを疎かにしていた。
重大な仕事の最中で道具が使用できなくなってしまったら、下手したら命を落としてしまう。
それだけ、ウィルの仕事は危険が付き纏う。
「じゃあ、これで行くよ。何か用事ができたら工房エリアにいるから、呼びに来て欲しいな」
「わかりました」
受付の人に居場所を伝えた後、ウィルは道具の手入れを行なう為に工房エリアに向かうことにした。
その時、事件が発生した。
彼がギルドから出た瞬間、大きい影がウィルの身体を覆ったのだ。
何が発生したのかと、反射的に視線を上に向ける。
すると其処にいたのは、ディオンだった。
「ディオン! な、何故……」
しかし、最後まで言葉が言われることはなかった。
ディオンは地面に着地したと同時にウィルに飛び付き、擦り寄ってきたのだ。
大好きな主人に出会えた――それを全身で表しているのだろう、グルグルと喉を鳴らし甘え出す。
仕事の関係で、構ってやる回数が減ってしまった。
それが影響してか、ディオンはユーダリル全域を飛び回ってウィルの姿を捜し、このように飛び付いてきたのだった。
だが、場所が悪かった。