ユーダリル

「あれ? 仕事は」

「ウ、ウィル様のお世話が仕事です」

「別に、食事は後でもよかったけど……まあ、いいか。おっ! 玉子焼きか。美味しそうだね」

「……オムレツです」

 後半にいくにつれ、徐々に小さくなっていく声音。だが、ウィルはハッキリと聞き取れていた。

「ご、御免。でも、美味しそうだよ」

 ウィルはユフィールから料理を受け取ると、仕事に利用していた机の上に置く。そして椅子に腰掛けると、フォークを手に取る。グチャグチャになってしまったオムレツを食べ食べていく。

 確かに見た目は悪かったが、味は美味しい。それによりウィルは何度も頷くと、バクバクと食べていた。その姿に、ユフィールはホッと胸を撫で下ろす。そして、嬉しそうに微笑む。

「美味しいよ」

「よ、良かったです」

「料理、上手いんだ」

「……多分」

「多分?」

「姉の方が、料理が上手いです」

 そう言うと、エプロンのポケットに仕舞ってあったハンカチを取り出す。そして、テーブルの上に落ちていた卵を拭いていく。一生懸命に頑張っても、姉のセシリアに勝つことができない。何事も完璧にこなしていき、ユフィールにとっては憧れの存在だった。それにより、表情が悲しくなっていく。

「でも、美味いよ」

「……嬉しいです」

「自信を持って、いいと思う」

「はい」

「で、また作ってほしいな」

「えっ!?」

「料理って、練習していくともっと上手くなるよ。それに、ピーマンを克服しようと思っているから」

 心の中では「何を言っている」と叫ぶウィルであったが、悲しい表情を浮かべているユフィールを見たくないというのが本音であった。それに、一度言ったことは訂正が利かない。その言葉にユフィールの表情は徐々に明るくなっていき、今以上に美味しい料理を作ると決意した。
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