ユーダリル
「アルン様に代わって、申し上げます」
すると、今まで黙っていたセシリアが口を開く。そして、ウィルが来るまでの出来事を話しはじめた。語られる内容に、ウィルはアルンに冷ややかな視線を送ってしまう。そう、アルンは一人一人の腹に拳を入れていった。そして見事に、意識を違う世界へと飛ばしてしまう。
「敵を増やすよ」
「構わないさ。来る者は、全て排除する」
この言葉こそ、アルンの本性であろう。ウィルは大きく溜息をつくと、放心状態の男と気絶した者達を交互に見ていく。そしてそのまま視線をセシリアに向けると、正直な感想を述べた。
「大変だね」
「はい。秘書、辞めましょうか?」
その瞬間、アルンの手からティーカップが落ちる。
そして、中庭に悲鳴が轟いた。
◇◆◇◆◇◆
紅茶を太股に溢してしまったアルンであったが、軽い火傷で済み入院には至らなかった。だが、セシリアより言われた「辞める」という言葉が相当ショックだったらしく、数週間へこんでいた。
そして、ピーマンを食べると宣言したウィルは、いまだにその約束を守っていない。今日も沢山のピーマン料理を用意して待っているユフィールは、空を眺めるだけ。その姿を眺めていた仲間達は彼女に同情したという。