ユーダリル
ユーダリルは別名〈トレジャーハンターの巣窟〉と、呼ばれている。
その理由は、数々の古代遺跡が関係する。
そもそも、どのような理由でこれらの島が浮いているのかわかっていない。
一部の考古学者の話では「失われた古代の力によって、島を浮遊させている」ということらしいが、なんとも曖昧で非科学的な答えだと異論も多い。
その結果、明確な答えは見つかっていない。
多くの人物を挽き付けるミステリアスが詰まった場所が〈ユーダリル〉と言う名前の土地。
それに、発見した宝の値打ちは計り知れないという。
好奇心を満足させる者。
金や名声を目当てとしている者。
集まってくる者の数も増えていけば、考え方も多種多様になっていく。
それに比例して、トラブルが発生してしまう。
数年前までトレジャーハンター同士のいざこざは、日常茶飯事とされていた。
流石に死者は出ていないが、怪我人は大量に続出していた。
それにより世界一美しい都市と謳われた場所は、不名誉な意味で有名となっていた。
今では〈ギルド〉が、トレジャーハンターを管理・取り締まりをしているので、平穏を保っている。
それに、警備も厳しくなった。
そのことにより、少しずつ今は落ち着いている。
「いい天気だな」
島の間を縫うように飛び、ウィルは空の散歩を満喫していく。
点在する島の大半には人が暮らしていたが、中には自然を残した島も存在した。
それらは誰かの私有地とも言われているが、ハッキリとした持ち主はいない。
お陰で好き勝手に立ち入ることができ、好きなように物を持っていけた。
ウィルはディオンに寄り道をすると伝えると、近くの島に向かう。
其処では轟音を鳴らし、巨大な滝が地上に流れ落ちていた。
光は水しぶきに反射し、煌びやかな虹が生み出されている。美しい花々が咲き乱れる島。
木々は風の流れに身を任せ、小動物達は其処を楽園として暮らす。
一体、何処から水が湧き出しているのか。
これも、ユーダリルを取り巻く不思議のひとつであった。
島が空中に浮遊しているので水不足の心配に陥ると思われるが、今までそれのようなことはない。
浮かぶ島同様、謎が多い。
謎が多いこそ魅力があった。
滝の側に近付くと手を伸ばし、何かを探す。
ウィルが探しているのは、日陰に咲くという花。
主に島の裏側に生息し、これを磨り潰した液体は美白液として女性の間で評判が高い。
しかし簡単に採取できないので、市場に出回ることは滅多にない。
今回この植物を採取している背景には、メイド達からの“美しくなりたい”という女性特有の欲求が関係していた。