ユーダリル
「さあ、行くわよ」
「お姉ちゃんは、いいの?」
「他人の心配をするより、自分の心配をしなさい。アルン様の妨害がある限り、幸せにはなれないわよ」
人生の先輩であるセシリアの言葉に、勇気付けられる。しかし、これに関しては山あり谷あり。
周囲が思っている以上に、難解である。
まず、アルンの性格に問題があった。セシリアの言うように、彼は二人の恋の進展を妨害して楽しんでいる。
それがアルンにとっての生き甲斐かどうか不明であったが、これが解消されない限り幸せは程遠い。そのことを理解しているセシリア。よって、二人の関係を何とかしようと努力する。
表立っては「二人の未来の為に」と言っているが、本当のところは違った。何故ならアルンのブラコンが治らなければ、セシリアの恋が報われないからだ。だからこそ、力が入ってしまう。
セシリアに促されるままアルンのもとへ向かうが、返された反応は予想通りのもの。つまり、嫌な顔をした。だが、頼みごとをしたのはセシリアなので、断ることはできなかった。
「構いませんよね」
「嫌とは、言っていない」
圧力を掛けてくるセシリアに、アルンは明らかに動揺をしていた。自分より年上であろうと平気な顔をして威圧し、アルンは会社を潰していった。その彼が、一人の女性に頭が上がらない。
これは珍しい光景であり、意外性があった。この一面を知っているのは、ごく一部。セシリア同様、アルンは恋愛のことは表に表さない。しかし落ち着きのない行動を見ると、アルンはセシリアのことを心の底から愛している。それにより、セシリア相手に真剣だった。
ふと、お茶会の出来事を思い出す。これはウィルからの聞いた話であり、ユフィールは詳しいことは知らない。「秘書を辞める」セシリアはアルンに向かい、そのように言ったという。
無論、これは前代未聞のことであった。もし本気で辞めるとなったら、アルンの会社が危機に陥る。これは笑いながら話していたので、冗談だということはわかった。その日のアルンは、どこか元気がなかったことをユフィールは覚えている。どうやらセシリアの冗談を、本気で捉えてしまったらしい。