ユーダリル
その態度にユフィールは「トラブルに巻き込まれた」と判断し、思わず涙を浮かべてしまう。
「やはり、何かがあったのですね」
「そうだけど……って、何で泣いているんだ。泣くことはないだろ? ユフィールが悪いわけじゃないんだから」
「そうですけど……ウィル様に、ご迷惑を掛けてしまって……それで……本当に、すみません」
「迷惑って、ユフィールじゃなくて他のメイド達だよ」
「でも、私は知っていました……」
嗚咽を漏らしながら、メイド達と考えていた計画を話していく。何でもウィルのピーマン嫌いを克服させようと、料理人に頼んで緑色のプディングを作ったらしい。しかしそれは建前であって、本当のところは違う。面白いからというとんでもない理由から、この計画は実行された。
「……迷惑な」
「やはり、迷惑なんですね」
「だから、違うって」
大粒の涙をこぼすユフィールに、ウィルは完全に参ってしまう。頭を掻き、どうしたらいいのか悩む。アルンから逃げることに関しては得意であるが、このような恋愛に関しては不得意分野であった。
相手がユフィールでなければ、逃げ出していた。だがそれを行ったら、間違いなくメイド達の総攻撃に遭う。いくら優しく接してくれるといっても、怒らせると怖い存在であった。
「何で、ピーマンかな?」
「以前、ピーマンを克服すると言っていましたので……その……ですから、プディングを作りました」
「あっ! あのことか」
昔から「口は禍のもと」と、よく言ったもの。ウィルはしゃがみ込むと頭を抱え、唸り声を発してしまう。ピーマンを食べると宣言したからには、それを実行しなければ男ではない。正直に嘘だと言えってしまえば複雑な問題にはならないだろうが、何より示しがつかない。
「ど、どうしました?」
「はあ、上手く逃げてきたのに」
年貢の納め時ということだろう。しかし、断るチャンスがないわけでもない。だが、それが嘘だと見破られるのも時間の問題。それなら素直に従うのが、一番の方法。それに、約束は守らないといけない。頭を抱え唸るウィルに、ユフィールは具合が悪いのか尋ねてくる。