ユーダリル
「そういうことだから、部屋に持ってきてほしいな。何とか、頑張って食べてみることにするよ」
「わ、わかりました」
「どうした? 元気がないね」
「何でも……ありません」
「そ、そう」
それは、素っ気無い返事であった。その珍しい態度にウィルは戦き、何があったのか尋ねる。しかし顔を横に向けてしまい、何も教えてはくれない。喋ってくれないユフィールに肩を竦めると、ウィルは先程の頼みごとを再度伝えた。そして逃げるように、駆け足で立ち去ってしまう。
手に負えないというのなら、逃げるのみ。そんな子供っぽい行動に、周囲から溜息が聞こえた。
そして、愚痴とも取れる言葉が続く。
「本当に、アルン様は厄介よね」
その言葉と同時に姿を現したのは、例のメイド達。何でもウィルの行動が気になり、後をつけてきたようだ。目撃したのは二人のやり取りだが、アルンの影がちらついてそれ以上の進展はなし。
「こうなったら、私達が――」
「それは、困ります」
「冗談よ」
物好きのメイド達であるが、関わっていいところと悪いところは理解している。「二人きり」と約束された今回、メイド達が押しかけたらウィルは間違いなく逃げるだろう。そうなれば、悲しむのはユフィールだ。
「でも、用意だけは手伝うわよ」
「そう、私達も心配なの」
「頑張って、恋を実らしてね」
「応援しているのよ」
関わってはいけないとわかっていても、好奇心を抑えることはできない。だからこそ間接的に関わり楽しむ。
質が悪いというべきだろう、ユフィールもそのことをわかっているので何も言えない。素直に断ればいいだろう。だが否定の言葉を述べた瞬間、メイド達の好奇心を煽ることとなる。
黙っているのが一番なのだが、いつまでも黙っているわけにもいかない。恋愛は、当人同士の問題。それなら、断るしかなかった。ユフィールは大きく頷くと、意を決したように口を開く。そして「来なくていい」と伝えようとしたが、その前にメイド達の言葉が遮る。