ユーダリル
一人対複数。はじめから、勝ち目はない。
「ウィル様の部屋へ行きましょう」
「忙しくなるわよ」
「私達が作ったお菓子も、必要になるわね」
一致団結とばかりに全員が天に向かって拳を突き上げると、一斉に廊下を駆け出す。一人取り残されたユフィールは、ただその光景を見詰めるしかない。何も言えなかった――そのことにユフィールはしゃがみ込むと、両手で顔を覆った。そして、周囲のお節介を嘆いた。
◇◆◇◆◇◆
「……量、多くない?」
目の前に並べられたお菓子に、ウィルは固まってしまう。それは、プディングの量が増えていたのだ。先程までは、ひとつのプディングだけ用意されていた。しかし、今はふたつ。
悪夢としかいいようがない光景に、ウィルの顔色が悪くなってしまう。だが、逃げることはできない。「食べる」と約束したのだから、食べないといけない。たとえ、気絶しようとも。
「ウィル様に、沢山食べて頂きたいのです。ですので、私達の分も特別に用意させてもらいました」
「そ、そうなんだ」
「これ、私が作りました」
「ピーマンは……」
「少しだけ入っています」
それは問わなくともわかっていたことであったが、念の為に質問をする。そして予想通りの答えに、ウィルは沈黙するのみ。少しだけと言われても、ウィルにとって量など関係ない。
要は、ピーマンが入っているか入っていないかの問題。そして、そのピーマンは見事に入っていた。
こうなったらピーマンが入っていないお菓子と共に食べ、味を消す作戦しかない。見たところ、プディング以外は普通の色をしていた。しかし、問題がないわけでもない。それは、大きさだ。
甘いものは、意外に腹に溜まる。このプディングを食べるだけで、一食分の食事に値するだろう。そうなるとプディングと一緒に別の菓子を食べて味を誤魔化すというのは、どうやら無理に近かった以外。やはり現実を受け入れて、素直にプディングのみを食べるしかなかった。