Moon Light
「杏奈、着いたよ」
旅館に到着した所で優しく揺り起こされた。私は寝てしまった事を謝ったが気にすることないと笑ってくれた。この笑顔に何度救われただろう。
でもそれと同時に正樹を裏切っている自分にヘドが出る。しかし彼を慕うこの想いを止める術を私は知らないのだ。
着いた先は老舗旅館だけあって風情は格別だ。窓から見える庭園も申し分ない。
庭園の横にはこの部屋専用の露天風呂がある。さぞかし気持ちがいいだろうなと思っていた矢先、私の肩を抱いて正樹が耳元で囁いた。
「杏奈の火照った体。綺麗だろうね」
「やだ、もう……んっ」
熱く私の唇を求めてくる。それに答えるように正樹の首に腕を回した。
正樹はそのまま私を抱き上げ露天風呂まで運ぶと服を素早く取り払い湯船に沈める。広いお風呂なのに私達は端の方で密着していた。
首に鎖骨にキスを満遍なく落としながら手は胸を揉み先端を捏ねる。堪らず漏れた声に嬉しそうな顔する正樹。
そして私が正樹に跨がり腰かけた形で深く繋がった。突き上げられる度に波打つ湯。私の声は外に響き渡っている。
恥ずかしいのに声が抑えられない。いつもと違うシチュエーションで私達は燃え、湯船から布団に移動してからも朝方まで深く溶け合った。
私の事を心から愛し抱いてくれる正樹。しかし私は別な人物に重ね合わせながら抱かれていた。