Moon Light
落ち合った私達はランチへ行き観光名所を回った。そうこうしているうちに日は落ち私達は旅館へ戻ってきた。
「そろそろ俺は戻るよ」
「えっ…待って。せめてご飯だけでも…」
「いや、長居するといろいろ面倒になりそうだしな」
「琢磨…。お願い一緒にいて」
ここが日常とかけ離れた場所のせいだろうか。普段は言えないような言葉もすんなりと出てくる。抱きつく私を優しく包みこんで琢磨は分かったと呟いた。
部屋に運ばれた夕食は昨日と同じように海の幸がふんだんに使われていた。美味しそうと言葉を発すれば、そうだなと返してくれる大好きな人。
これが彼との本当の新婚旅行ならばなにも言うことはないのに…。
胸につかえる思いを紛らわすように普段は飲まないお酒に口をつけた。お酒に弱い体はあっという間にアルコールが回り頭がボーッとし始める。
しょうがねーなという声を聞いたような気がしたがそのまま記憶を失った。
体がふわふわと浮遊している感覚。あれ…私なにをしてたっけ? と、次の瞬間、体がちゃぷんとお湯に浸かる。
溺れる、と脳が判断したと同時に意識を取り戻しそばにあるものに無意識に掴まった。私が掴まったのは琢磨の首で、私は琢磨に抱きかかえられ温泉に浸かっていたのだ。
「もう、ビックリした」
「寝たお前が悪いんだよ」
そして優しく唇を塞がれると熱い舌が口内を暴れ回った。