デイジー
そのはじまり
「……書けねぇ………」
ベッドに凭れるように座った俺は、そう呟いていた。
何が書けねぇって、甘いラブソングっつーもんで。
何でそんなもん書かなきゃなんなくなったのかと言えば、3日前の社長の言葉。
『この夏のドラマの主題歌、お前らに決まった。そこでだ、聴くのも照れちゃうくらい甘いラブソングっつーものをだな、書け!』
って言われれ。
それから3日、俺はペンとノートを片手に悩み続けてる。
別に俺が書かなくても、他の奴らが書けばいいんだけど、
『せっかくだから、みんなで書いて、そん中から選ぼうよ。』
なんて言い出したバカがいて…
そんなわけで、俺が悩むことになった。
だいたいね、俺は苦手なんだよ。
何つーの?その、ラブソングっつーもんが。
ガキの頃から音楽が好きで、ギターばかり弾いてきた。
そりゃあ、男だから好きな女の子もいたけど、それよりギターの方が好きだった。
彼女って呼べる存在もいた。
だけど、ギターより夢中になることはなくて…
甘い恋っていうより、苦い思い出の方が多いくらいだった。
『私とギター、どっちが大切なの?』
そんなことを聞かれるのも面倒になったのが高校3年。
それが俺の最後の恋の思い出。
そんな奴が甘いラブソングっつーもんが書けるわけがねぇ。
「…やっぱ無理だよな〜」
「何が?」
ノックも無しに俺の部屋に入ってきたのは、俺の幼なじみでメンバーの小暮啓太。
女みたいな綺麗な顔してるこいつは、絶賛恋愛中。
歯の浮くような甘い言葉も、すらっと出てくるんだろうな。
クソ〜!
「…あ〜、書いてたんだ〜。」
ニタニタと笑いながら入ってきた啓太は俺のベッドに座ると、頭をポンポンと叩いた。
「薫には難しい宿題だったね〜。」
「なっ、ふざけんなよ!俺にだって…」
「書ける?チョコレートみたいに甘いやつ。
お口に入れたら蕩けちゃう〜みたいな。」
う…………
言葉に詰まる俺を面白がるように、啓太の言葉が続く。
「俺はね、薫の書く歌詞、好きだよ。
春の陽だまりみたいに暖かい恋の歌とか、木枯らしが吹き付ける冬の日みたいに辛い恋の歌とか。
ギターばっかり弾いてて、彼女に逃げられちゃうお前が好き。
だからさ、そんなに悩むなよ。
…って言っても、お前は悩むんだろうけど。
さ〜、そろそろ買い出しいった奴らが帰ってくるから、飯食って練習しようぜ。」
そう言って、また頭をポンポンと叩いて啓太は立ち上がった。
「だからガキじゃねぇって…」
そう言った俺の言葉は閉じられたドアに遮られた。
俺の書いたのが好きか……
そう言った啓太はきっと、俺らしく書けと言っていたのかもしれない。
俺の言葉で、俺の思う甘いラビソングっつーやつを。
「啓太にはかなわねぇな……」
あいつの言葉で、ガチガチになっていた肩の力がすっと抜けたように感じた。
ベッドに凭れるように座った俺は、そう呟いていた。
何が書けねぇって、甘いラブソングっつーもんで。
何でそんなもん書かなきゃなんなくなったのかと言えば、3日前の社長の言葉。
『この夏のドラマの主題歌、お前らに決まった。そこでだ、聴くのも照れちゃうくらい甘いラブソングっつーものをだな、書け!』
って言われれ。
それから3日、俺はペンとノートを片手に悩み続けてる。
別に俺が書かなくても、他の奴らが書けばいいんだけど、
『せっかくだから、みんなで書いて、そん中から選ぼうよ。』
なんて言い出したバカがいて…
そんなわけで、俺が悩むことになった。
だいたいね、俺は苦手なんだよ。
何つーの?その、ラブソングっつーもんが。
ガキの頃から音楽が好きで、ギターばかり弾いてきた。
そりゃあ、男だから好きな女の子もいたけど、それよりギターの方が好きだった。
彼女って呼べる存在もいた。
だけど、ギターより夢中になることはなくて…
甘い恋っていうより、苦い思い出の方が多いくらいだった。
『私とギター、どっちが大切なの?』
そんなことを聞かれるのも面倒になったのが高校3年。
それが俺の最後の恋の思い出。
そんな奴が甘いラブソングっつーもんが書けるわけがねぇ。
「…やっぱ無理だよな〜」
「何が?」
ノックも無しに俺の部屋に入ってきたのは、俺の幼なじみでメンバーの小暮啓太。
女みたいな綺麗な顔してるこいつは、絶賛恋愛中。
歯の浮くような甘い言葉も、すらっと出てくるんだろうな。
クソ〜!
「…あ〜、書いてたんだ〜。」
ニタニタと笑いながら入ってきた啓太は俺のベッドに座ると、頭をポンポンと叩いた。
「薫には難しい宿題だったね〜。」
「なっ、ふざけんなよ!俺にだって…」
「書ける?チョコレートみたいに甘いやつ。
お口に入れたら蕩けちゃう〜みたいな。」
う…………
言葉に詰まる俺を面白がるように、啓太の言葉が続く。
「俺はね、薫の書く歌詞、好きだよ。
春の陽だまりみたいに暖かい恋の歌とか、木枯らしが吹き付ける冬の日みたいに辛い恋の歌とか。
ギターばっかり弾いてて、彼女に逃げられちゃうお前が好き。
だからさ、そんなに悩むなよ。
…って言っても、お前は悩むんだろうけど。
さ〜、そろそろ買い出しいった奴らが帰ってくるから、飯食って練習しようぜ。」
そう言って、また頭をポンポンと叩いて啓太は立ち上がった。
「だからガキじゃねぇって…」
そう言った俺の言葉は閉じられたドアに遮られた。
俺の書いたのが好きか……
そう言った啓太はきっと、俺らしく書けと言っていたのかもしれない。
俺の言葉で、俺の思う甘いラビソングっつーやつを。
「啓太にはかなわねぇな……」
あいつの言葉で、ガチガチになっていた肩の力がすっと抜けたように感じた。
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