【完】甘い香りに誘われて 2 *極道若頭×姐さん修行中の♀
「渡辺さん、お味噌汁あといくつですか?」
「結衣さん、朝は大丈夫ですって。若の支度がおありでしょ。」
「今日は、もう起きたから大丈夫。あの寝ぼすけどうにかなりませんかね。」
私が厨房から食堂の方を覗くと田口さんが指を3にしてこっちに向けてきたのでお椀に3つお味噌汁をついだ。
「結衣さんが見えてからですよ。それまで若は7時にはこちらにおられた。」
「それって私に手がかかって隼が疲れてるってこと?」
お椀をトレイに乗せながら渡辺さんを恨めしそうに見ると
「いや、安心して眠れるってことですよ。いい事じゃないですか。」
「早起きの方がずっといい事でしょ。」
笑いながらテーブルに着いた組員さんの席にお味噌汁を置く。
「結衣さん、ありがとうごぜぇやす。」
「すいやせん。」
最初の頃は、私が配膳することもかなり拒まれたけれど
それは私が家族じゃないから?と聞いた。
家族の人がしたら拒む? そんなやりとりに私は勝利を手にし
今はここでの私の仕事が出来て何だか嬉しい。
自分にだけ仕事や役割がないというのは、非常に淋しいものだ。
同時に、私が引くべき時もわかるようになった。
私が気を使えば回りも気を使う。
だから、手があいた時とかついでの時とか、近くだからとか
そんなことに留めるようになった。