【完】甘い香りに誘われて 2 *極道若頭×姐さん修行中の♀
洗い場のスペシャルトリオは持ち場の移動がない。
以前は、交代でしていたらしいが、私が棚へ手が届かないことから拭きが免除され、それならこのままでいいんじゃないかと一応相談の上決定。
田口さんの素早い洗いと見事なまでの選別により私の作業は一番楽なんじゃないかと思う。
林さんも、感心するぐらい一度で食器をふきあげる。
「ねぇ…それでほんとに拭けてる?」
一度笑いながら見せてもらったけれど
ほんとうに水滴ひとつついていなくて
「私がそこじゃ時間かかったね。」
「手の大きさが違いやすよ。」
「結衣さんがそこじゃ拭いた食器も片付かねぇ。」
渡辺さんが後ろから吹き出すから
ジロリと睨めば田口さんから
「なーに、結衣さんが真ん中だと横向きゃ林の動きが良く見えて
そりゃ便利なんですよ。」
「ちょっと待ってそれ私が視界に入ってないってこと?」
「何か下で動いてるのぐらいはわかりやすよ。」
林さんまでそんな事を言う。
それがあまりに可笑しくて
「私のお陰じゃないですか。」
「そうですよ。結衣さんのお陰でごぜえやす。」
なんて笑うから私も大声で笑い続けた。
「言いましょうか?」
「言ってくだせぇ。」
「聞きたいですねぇ。」
「ちっさいって思ってます?」
「思ってません。思ってません。」
「あぁ。渡辺もこれっぽっちも思ってなんかおりやせんよ。」
あはははは
夕食のあとのこの仕事も本当に楽しい。
洗い終わった後に汗をふきながらいつも少しだけお喋りをして私は部屋へと戻る。