なんで私が芸能人ッ!?





「先輩、おはようございます♪」





ガチャッとドアを開け、出てきた先輩にご挨拶。





「ん、はよ。…………今日の服、なんか辛めなんだな。」






「あー、わかりました?
未夢ってほんの少し黒いじゃないですか。だから変えてみました。」





「そうか……結構似合ってんじゃん?」




そう、にって笑みを広げて言う先輩。





「へ!?え、えと……ありがとうございます?」





いや………いきなり変化球とかほんとやめてほしい。
こんな綺麗な顔でこんなこと言われちゃったら、ねえ?
っていうかこんなことばっか言ってるから女の子が寄ってくるんじゃないかな…。





「ぶっ……。」





脳内迷走してると聞こえてきた笑い声。





「………先輩、なに笑ってるんですか?」





「バーカ、動揺しすぎ。」





「どど、動揺なんてしてません!!」





「ふーん、じゃあ俺がキスしても動揺なんてしないのか?」






「そういう意味で言ったんじゃ……っ!!!!」





否定した瞬間、頬に来た感触。
…………これは、キスって言うより舐められた?





はっきりわかった瞬間、顔に血がのぼる。





「なにするんですかっ!?」





これはちょっと、頬にキスされるより恥ずかしいんですけど。





「ほら、やっぱ動揺すんじゃねーか。」





「だっから、それは………」





「それとも……そんなに嫌だったのか?」





すっごい寂しげな表情でいう先輩。
そんな顔されると、嫌って言うのも気が引けちゃうんですけど……。





「嫌って言うか……そりゃ良い気分じゃあないですけど……。」





「ぷっ……嫌じゃないんだ。」





先輩は、いい気分じゃないって言ったのに笑いを堪えてそう聞いた。
でも、そこより。





「先輩!騙したんですか!?」





あんな顔しといて。
今は打って変わっていつもの余裕な表情。





「んあ?騙してなんかねーよ。
つか、そろそろ仕事行くぞ。」





「うわ、しらばっくれるんですか!?
先輩、絶対私より演技上手いですよね。」





「……そんなことねーよ。
俺にはあんな演技できない。
だからほら、さっさと車入れ。行くぞっ。」






「…………………。」







それから私は、なんとなくなにも言えずに車に乗りこんだんだ。
先輩に認めてもらってることが、どれだけ支えになってるか……先輩はわかってるかな?









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