なんで私が芸能人ッ!?
「未夢が憑いてるって、まだ役が抜けきれてないってこと?」
男の人が尋ねる。
「ええ、たぶん………。
この目は未夢です。」
ってか何?
あたしは未夢に決まってんじゃん。
「りまちゃん?わかる?
もう演技は終わりで良いんだよー。」
知らない人がまた声をかけてくる。
だからりまって………………。
「おいっ、りま?
………すいません、ちょっと休憩もらって良いですか?
俺がなんとかしますんで。」
うわぁ、何この人……。
めっちゃイケメンなんだけど。
「おお、頼んだ。
よし、じゃー未夢がいないシーン撮ってくぞ。」
あ、なんかさっきまで話しかけてきてた男の人、偉い人だったみたい。
皆が一斉に動き出した。
「りま、行くぞ。」
イケメンさんに腕を引かれる。
どこに行くんだろ………。
なんとなく周りを見ながら歩いてたら皆が動いてるなかで一人、立ち止まってるあの女の子が目についた。
「あそこまで役に入り込む人間、初めて見た…………。」
さっきと全く違う呆然とした様子で、そう呟いていた。
なぜか少し気になったけど、あたしは既に女の子がいる部屋を後にしていたのだった。
「りま、聞こえるか?
俺だ。」
「……………?」
「早く戻んねぇと………キスするぞ?」
「#$%&@┻╂§☆¥★~っっっっっっ!!!!????」
えっ、何言って……。
一瞬で顔が赤面した。
「お、赤くなった。
てことはりまだな。」
「りりりりりりまですよ!!!!」
き、キスって………。
「嘘だよ、バーカ。」
「な、なんで……」
「だからお前口に出てんだよ。」
「う、嘘!!」
「嘘だと思うならそれで良いけど?」
「………………。」
「ん、なんだ?
まさか………キスしてほしかったのか?」
「ち、違いますよ!!!!」
「じゃあ何だよ。
つーかあんまり否定すると図星に見えんぞ。」
うっ…………。
ちょちょっとだけ残念だったかもだなんて言えるわけ無いじゃん!!!
っていうか残念になんて思ってないもん!!
「…………まあいいや。
お疲れ、りま。」
そう言って頭にぽんって手を置く先輩。
これはなんだか落ち着いて、男の人に慣れてないのに顔が赤くもならない。
「良かったぞ。
たぶん、いろんな人がそう思ってる。」
「台本とすごく違うのに……でも良かった。
すごく楽しかったなぁ………。」
なんか、すごく眠い。
疲れたのと、先輩の手でもう眠気の限界………。
「うおっ!?りまっ。」
最後に、慌てた先輩が倒れかけた私を支えて、溜め息をつきつつお姫様抱っこをしたのが見えた。
ん?お姫様抱っこ……………??