なんで私が芸能人ッ!?
それからしばらくして皆が解散した。
私と先輩も出ようとしたとき………
「りーまっ!!!!」
ってある人物が飛びついてきた。
まあもちろん……
「うわっ、稚菜ちゃん!?
どど、どうしたの?」
慣れてないハグに動揺しながら言うと、稚菜ちゃんは私ではなく先輩に声をかけた。
「藤堂先輩さん♪
りま、借りてもいいですか?」
「ああ……良いけど、もう遅いから早めに頼む。」
「了解です♪」
私は稚菜ちゃんの心底楽しそうな笑顔を見て放置されたのかと思ったが、先輩から離れたとこにつれてかれた。
「稚菜……ちゃん?どうしたの?」
そう言うと、一瞬申し訳なさそうに笑った稚菜ちゃんは
「稚菜ね、りまの藤堂さんのこと好きになっちゃったの。」
って真剣な顔で言った。
思っても見なかった言葉に少し動揺してしまう。
「え………?」
「すっごいかっこいいんだもん。
りまのこと守ってる感じとか優しそうだし。」
「いや、それはマネージャーってだけで……」
私だから守ってる訳じゃないだろう……っていうか、守られてるのかな?
「でね?りまとライバルになっちゃうかなとか思ったんだけど、堂々と言っておきたかったんだ。」
だから………さっき先輩と話してるときあんなに嬉しそうだったんだ。
「あっ、でもりまに遠慮しろとか近づくなみたいなひどいことは言わないよ~。
ただ、ライバルとしてよろしくって意味だからね♪」
「でも私っ……先輩のことが恋愛対象で好きってことも……」
稚菜ちゃんが言ってるのって恋愛対象でってことだよね?
「りまがそう思ってても、むこうはどうかわかんないもん。
りまだって今本当にそう思ってても、あんな先輩みたいな人が近くにいたらこれから好きになっちゃうよ。
だから………りまのことは大好きだけど、ライバルだから!!!!」
「そ、そう言われても……。」
「あっ、けど稚菜藤堂さんの下の名前知らないんだ………。
それだけ教えてくれないかなっ?」
ぱんって手をあわせてお願いする稚菜ちゃんは恋する女の子って感じでほんとに可愛い。
「ら、來だよ。藤堂來が先輩の名前。」
「そっかぁ……來さんかぁ………。
ありがと~、りま!!」
「う、うん………。」
「じゃあ、來さんのところにもどろっかぁ。」
一気に雰囲気が緩くなった稚菜ちゃんだけど、そんないきなり下の名前で呼んじゃうんだ……。
まあ、私がどうこういうことでもないんだけど………。
「そだっ、りま?」
「ん?」
今度はなんだろう………。
「先輩の話してるとき、りまちょっとキャラ崩れてたよ♪」
「嘘………。」
そういえば、芸能人のりま意識してなかったかも………。
「ほら、行こっ!!」
私にとってさっきの稚菜ちゃんの言葉は大きくて一瞬固まると、稚菜ちゃんに先輩のところまでつれてかれた。
だって………演技が完璧じゃなかったのはショックだけど、私がりま自身で稚菜ちゃんと話せたってことだよね?
その事に気づいて放心してた。
「來さんっ、失礼しました♪」
「えっ?………ああ。
ってりま?おーい、戻ってこーい。」
先輩は來さんって呼ばれたことに気づいてハッとしてた。
「おいりま?」
「えっ?は、はい!!」
「ったく、どっかに意識飛ばしてんじゃねぇよ。」
「はい………。」
「……やっぱり、仲良いなぁ。」
「ん?稚菜さん何か?」
先輩が下の名前で読んだのは芸名だったからだろう。
って、稚菜ちゃん何か言った?
「いえっ!!
それじゃ、邪魔してすいませんでした。」
稚菜ちゃんはペコリって頭をさげると、私ににっこり笑って去ってった。
…………こうしてなぜか、私に2人?のライバルが登場しちゃったみたいです。
「はぁ…………。」
私がなんとなく疲れてため息をついたとき、車の扉を開けた先輩が私の方を向いた。
「あっ、りま。」
「な、なんですか……?」
なんとなく身構えると、
「演技、良かったぞ。」
にって笑って先輩が言った。
「へ………?」
びっくりしたけど、嬉しくて少し疲れがとんだ気がした。
だから私は先輩に笑顔を向けてお礼を言ったんだ。
「ありがとうございます、先輩っ。」