なんで私が芸能人ッ!?







俺は、そうしてしばらく女を眺めていた。
演技に夢中なのか、気づく様子は全くない。






キーンコーン……







そして、予鈴がなった。







その瞬間、女はまた変わった姿を俺に見せるんだ。







予鈴に気づきハッとなる女。
演技をやめ、本を片付けようとしていた。
そう、演技の終わりがわかるくらい豹変しているのだ。








女は無意識的に(よくやっていて、習慣化しているのだろう)本棚の方を向く。
………俺のそばの本棚に。







だが、こちらを向いた女はなぜか固まっていた。
いやなぜか、というのは訂正しよう。
初対面の女のこの反応は珍しくない。






理由?それは俺の容姿。







興味はないが、俺の顔は悪くないらしい。
自惚れな訳ではなく、この学園に入って勝手にファンクラブまで作られた。







…………つまりこいつも、どうせ顔を赤くしてギャアギャア騒ぐに違いない。
期待外れだったかもな。




ところが、こんな回想をしてる間にこいつは解凍されていた。
俺は勿論顔を赤くしたりするものだろうと思っていたけど。
この女は、口を開けて驚愕していた。







まるで、今すぐ叫びだしたいかのように。







俺の顔に興奮して叫びだす野郎はいるが……
どちらかというと、化け物でも見たかのような叫び。







それはちょっと、初対面の相手にたいして失礼じゃないだろうか。







まあそれはさておき、一応確認しておこう。







「お前、矢城りまだな?」









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