神楽先生には敵わない
Act.1 働かない先生
「もしもし、あっおはようございます。櫻井です。先生居ますか?えっ!また!?…はい、わかりました」
昼過ぎの駅前ロータリー前は思った以上に混んでいた。行き交う人々も多いがバス、タクシー待ちの停留所には人が行列が出来ており、肝心のバスやタクシーは一台も止まっていない。
偶々だろうなと感じつつ目の前の光景を眺めながら電話を切った。
ーーまたサボってるな、先生。
はぁと小さく溜息が出た。普段なら直接マンションに行くのだが、なんだか虫の知らせなのか確認してからマンションへ向かおうと自宅に電話をかけたのだ。
だが好都合な事が一つある。
その相手がいるであろう場所はすぐ近くにあり、みちるの立つ場所から目の鼻の先にあるパチンコ屋であるということ。
「まだ原稿終わってないのに、アシさん達に任せて遊ぶなんて許さないんだからっ」
明日が締切なのは相手だって承知のはず。昨日もお願いします!と叱責し、わかったわかったとヘラヘラ笑いながら
大好物のマカロンを食べていた。
そのマカロンだって相手のやる気を起こさせる為に銀座のデパ地下まで足を運び買って来た人気商品だ。
離れた場所からでも店内の騒音が若干漏れてくるパチンコ店へ、みちるはカツカツとヒールの音を立てながら足を向けた。