神楽先生には敵わない


その日の夜、

先生は夕方要約原稿に向かい始めた。


カリカリとペン先が動く音。

シャッシャッとスクリーントーンを削るカッターの音。




真っすぐ原稿に向き合った先生は、

昼間のおちゃらけた表情ではなく漫画家の顔をしていた。



「....」




近くのソファーに座って私は黙ったまま、
その様子を見つめる。



ーー黙ってればそこそこ恰好いいんだけどなぁ....。




顔立ちもじっくり見れば端正だし、

ちゃんと身なりを綺麗にしたらモテる要素はたくさんありそうだ。



なのに先生は全く気にしないタイプだから、他人から見たら悪く言えば浮浪者に近いような姿をしている。



こんな人が日本を誇る大人気の漫画家だなんて、

誰も信じないだろうけど....。


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