神楽先生には敵わない


開催場所となる河川敷にはたくさんの人間でごった返していて、
まともに前すら歩けなくなるぐらいの人だった。


「凄いですね、ここ」

「大丈夫?みちるちゃん」

「はい、何とか…」


先生がゆっくりとした足取りで歩くも、前後に行き交うに人の流れにはぐれてしまいそうになる。




「みちるちゃんこっち」


その時先生は私の手を一度離すと、握っていた手で私の腰に腕を回し体を抱き寄せてきた。



「!!!」


一気に先生との距離が近づいて瞬間的にドキンと胸が高鳴った。


薄い浴衣の生地の上からでも感じる先生の素肌と、
ほのかに香る香水が更に鼓動を大きくさせる。



―――うわぁ‥、凄い照れる!!!


腰を支える手の力や、密着する体の感覚と体温。


花火とかの問題じゃなくて、
この状態が既にクライマックスなのかもしれない。



少し歩くと漸く密集地帯は抜けて、まともに歩ける場所まで出てきた。

打ち上げ場所からは若干離れてはいるが、
花火を見れるなら充分の場所だ。

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